食中毒と聞くと暑い夏場に多いイメージですが寒い冬場に流行する食中毒もあります。
その代表が『ノロウイルス』です。
ノロウイルスはカキなどの二枚貝を食べたり感染した人の汚染物に触れたりした場合に感染し激しい嘔吐、吐き気、発熱、脱水などを生じます。
そんな怖いノロウイルスですが他の細菌、ウイルスと同様に『アルコール消毒』で無害化できると思われがちですが実はノロウイルスにアルコール消毒はあまり効果が無いのです。
今回はそんなノロウイルスに効果的な除菌法や感染を防ぐ方法を紹介していきたいと思います。
●ノロウイルスとは?
ノロウイルスとは冬場に多く発生する感染性胃腸炎を引き起こす原因菌でカキやアサリなどの二枚貝を十分に加熱せずに摂取したり汚染された食品を食べたり、感染した人の汚染物に接触したりして感染します。
自然界の中ではノロウイルスは生存できず二枚貝の内臓や人間の体内などに生息しています。
※なぜノロウイルスはカキなどを食べるとなりやすいのか?
ノロウイルスの多い感染経路は汚染された二枚貝を食べ人間に侵入したウイルスが小腸内で増殖するパターンです。
そして感染した人は激しい嘔吐や下痢を生じますがこの糞便内にノロウイルスは残っていて排水として処理されても多少残っておりその後、海に排出されまたそれを二枚貝が吸収し内臓内で蓄え汚染された二枚貝を人間が食べると言うサイクルで生存しています。
二枚貝は海水を吸い取ってろ過して食事をしています。
その特性上海に放たれたノロウイルスも二枚貝に吸収されて体内に蓄積されていってしまいます。
これがカキなどの二枚貝を食べると感染しやすい原因です。
ですが海にいるすべての二枚貝がノロウイルスを持っているかと言うとそういうわけでもなく海辺に近い付近で育ったものには少し注意が必要です。
特に人口が多い地域の海辺では人間が出す排水も多く二枚貝が吸収するリスクが高くなってしまうのでそのあたりで水揚げされた二枚貝はしっかり加熱したりして食べることが大切です。
●なぜノロウイルスにはアルコールが効かないのか
インフルエンザや今流行っているコロナウイルスにはアルコール消毒は有効です。
ですがノロウイルスにはアルコール消毒はあまり効果が無いとされています。
この違いはウイルスの形態が関係しています。
ウイルスの形態には『エンベロープウイルス』と『ノンエンベロープウイルス』と言う2種類があります。
エンベロープとは脂質でできた膜で、その膜を持っているウイルスを『エンベロープウイルス』持ってないウイルスを『ノンエンベロープウイルス』と分けます。
脂質の膜を持っているエンベロープウイルスは脂質の膜を持っているためアルコール消毒が有効です。
逆に膜を持っていないノンエンベロープウイルスにはアルコール消毒はあまり効果はありません。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスは『エンベロープウイルス』であるのでアルコール消毒が有効ですがノロウイルスはノンエンベロープウイルスなのでアルコールではあまり効果が無いのです。
●ノロウイルスには何が有効?
ではアルコール消毒があまり効かないノロウイルスには何が有効なのでしょうか?
ノロウイルスに有効なのは『次亜塩素酸ナトリウム』です!
塩素系の次亜塩素酸ナトリウムは高い殺菌力を持ちノンエンベロープウイルスでも不活化することができますしエンベロープウイルスにも有効とされています。
ですが注意点として高い殺菌力があるため手指などの皮膚に付着すると炎症を起こしてしまったり肌がただれて荒れてしまうことがあるので濃度の濃いものを使う際にはしっかり手袋などをして使用するようにしましょう。
また金属などに対しても腐食作用があるのでキッチン周りなどの除菌を行う際には注意が必要です。
※嘔吐してしまった場合の処理方法
家族など同居人がノロウイルスに感染している場合、その強い吐き気や気持ち悪さで床やカーペットの上などに嘔吐いてしまうケースは多いです。
そんな時に嘔吐物を処理して処理した人も感染してしまい感染が広がってしまうことも多いです。
そうならないように適切な処理方法をご紹介します。
用意するものは次亜塩素酸ナトリウム消毒液、手袋、マスク、いらない布やタオル、ペーパータオル、ビニール袋、バケツ、エプロンなどを用意します。
処理の手順としては・・・
①マスクをして手袋を2重にしエプロンをかけ自分自身を防護します。
②嘔吐物にペーパータオルを被せその上から次亜塩素酸ナトリウムを嘔吐物と同じくらいの量はねないよう静かにかけます。
③嘔吐物の脇から布やタオルを使って中心に集めるように拭いていきます。嘔吐した際に嘔吐物が周りに飛び散ってしまっている場合が多いので良く周りを見て拭き残しが無いよう注意しましょう。
④ビニール袋に嘔吐物と使用した布やタオルを入れ上からまた次亜塩素酸ナトリウムをかけしっかりと縛り処理しましょう。
⑤嘔吐物を取り除いたら再度布に次亜塩素酸ナトリウムを染みこませしっかりと拭きましょう。
10分程度したら水拭きで綺麗にふき取ると効果的です。
カーペットなど色落ちが心配な場所には次亜塩素酸ナトリウムはあまりおすすめできませんので熱湯をかけたりしましょう。
ノロウイルスは熱にも弱いため熱湯をしっかりかけて消毒する方法も効果的です。
⑥最後に自分が着ていたエプロンやマスクを処理してしっかり手を洗って換気を行いましょう。
かなり工程がありますがこのくらいしっかり行っていた方が感染するリスクも減りますし余計な感染を広げる心配も減ると思います。
●ノロウイルスを予防するには
ノロウイルスの多くの感染はウイルスを持っている二枚貝を食べて感染してしまうケースと、感染した人の嘔吐物などを処理した際に感染してしまうケースが多いです。
カキなどの二枚貝を生で食べる場合にはしっかり安全な信頼できるものを選んだり特にこだわりが無い場合には焼いたり蒸したりして火をしっかり通してあるものを食べるようにしましょう。
嘔吐物などの処理も先ほど記載したように厳重に行うことで余計な感染を広げずに済むと思います。
●まとめ
今回は冬場に多く発生するノロウイルスに対する消毒法などを紹介しました。
ノロウイルスは『ノンエンベロープウイルス』と言われアルコール消毒はあまり効かず塩素系の消毒液である『次亜塩素酸ナトリウム』が有効です。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどはエンベロープウイルスと言う脂質でできた膜を持っているためアルコールで不活化ができアルコール消毒が有効です。
同じウイルスだからとアルコール消毒だけで消毒した気になっていても不活化できていないウイルスもあるのでしっかり有効な消毒液を選びましょう。