●ムチウチとは?
交通事故による外傷は、主に打ち身・捻挫・骨折・頭部外傷などがあります。
その中で、もっとも代表的な傷害で賠償上の問題を多く含むのが「むち打ち
(損傷)症」です。これは、正式な診断名ではなく俗称です。診断名は通常は
「外傷性頚部症候群」あるいは、軽いものでは「頚部捻挫」となります。
衝突時、首が前後にムチのようにしなることから、また、乗馬で馬の尻にムチを
当てると馬が驚いて前に飛び出し、そのとき頭が後ろに放り出されてその後、
首の痛みが続くということからむち打ちと呼ばれるようになったようです。
●ムチウチの種類
「むち打ち症」とは、その起こり方をさすものですが、その病態から一般的には
次のように分けられています。
◦頸椎捻挫型
むち打ち症の中で最も多く、70%を占めるといわれています。足首などを
捻挫した時に内出血が見られますが、それと同じ様なことが首の周りに
起こっていると見なされるものです。頚椎の骨の周囲にある靭帯や骨と骨の
間にある関節包などが損傷されたものです。
◦バレリュー症候群型
後頚部交感神経の刺激症状として、目の症状や内耳の症状、心臓の症状、
咽喉頭部の症状などを呈するが、耳鼻科、眼科、内科などの他覚的所見は
乏しいため、自覚的愁訴が主となります。
◦神経根症状型
脊髄の運動神経と知覚神経が集まっているところを「神経根」と呼びます。
この神経根の周りに腫れが起こったり、引抜きのような損傷が起こると、
それぞれの神経がコントロールしている部位に症状が現れます。
神経学的検査などにより、他覚的所見が認められます。
●ムチウチの症状
「むち打ち症」の症状には個人差があり、事故状況や、被害者の体質・年齢
などによっても症状が違ってきます。 事故直後は、脳震盪の症状として短時間の
意識障害を起こすことがあります。 また、重症の場合は、脊髄の周りの腫れや
内出血により手足が麻痺したり失禁したりすることがあり、その場合、進行の
状況によっては手術の必要も考えられます。 頚部の損傷の部位や程度によって
異なりますが、一般的に以下のような症状が出てきます。
➀首、肩、頭部の痛み
➁首の痛みとその周辺(頭部、肩、腕、手など)の放散痛
➂吐き気、嘔吐
➃肩、腕、手などへのピリピリした神経痛
➄首の可動域制限
➅症状が慢性化すると、首のこわばりも加わります。
※以下のような事が起こっている可能性があります。
◦筋肉の損傷、靭帯の損傷、神経の圧迫・損傷、椎間板の損傷、骨の損傷、
血管の損傷、脊髄の損傷・炎症など、様々な症状がでてきます。
◦より細かな症状
➀頸部の捻挫を主とする症状
頚部の筋肉や靭帯、関節包の損傷によるものです。脊髄に損傷がなく、
強い自律神経失調症状やはっきりした神経根症状もみられない、
主として頭痛、頚部の疼痛、頚項部筋肉の圧痛、頚部の運動制限を
中心としたものです。
➁神経根の障害を主とする症状
神経根に腫れや引き抜き損傷がおこると、それを支配している領域に
症状がでます。上位頚椎の場合は大後頭神経支配領域の放散痛及び
神経の圧痛、下位の場合は首から肩、腕にかけての放散痛、しびれ感、
上肢の筋力低下、筋萎縮、運動及び知覚障害などが起こります。
スパーリングテスト、ジャクソンテストなどと呼ばれる神経学的検査に
よって、他覚(客観的)所見や皮膚の知覚部位と一致する障害、腱反射
の異常などで診断されます。
➂髄液圧の低下による症状
2000年ごろから知られるようになった「低髄液圧症候群」といわれる
もので、むち打ち症などの外傷により髄液が漏れ、髄液圧が低下すること
です。頭痛、めまい、はきけ、集中力・思考力の低下、脱力感、視力障害
など種々の症状がみられます。
➃自律神経の障害を主とする症状
椎骨脳底動脈の血行不全により、その支配下の視床下部、脳幹部の血流減少
により起こります。首や肩の症状は強くなく、「頭痛、頭重、眼精疲労、
耳鳴り、難聴、めまい、声のかすれ、記憶や集中力の低下」、内臓の症状
として「食欲減退、消化不良、吐き気」などの胃腸障害がみられます。
●ムチウチの治療法
「むち打ち症」の治療は、受傷からの時間的経過により、急性期、亜急性期、
慢性期に分けて行うのが一般的です。「むち打ち症」の70パーセントを占める
といわれる「頚椎捻挫」を中心に治療法を述べていきます。当院では、このことが
関与しているかどうかを見極めながら、手技療法で治療を変えていきます。
ムチウチの治療は当然、時間と期間がかかってきてしまいますので、それを考慮
しながら、治療します。